パルナ書房

京の表は壬生、裏に回れば島原の町の本屋~2013年4月でパルナ書房は閉店いたしました。

パルナ書房はなぜ閉店に至ったのか? 「新文化」記事寄稿2013/10/24号の紹介

パルナ書房閉店後、2013年5月末、東京に1週間ほど行ってきました。
その時に出版関係者を集めて
「パルナ書房はなぜ閉店に至ったのか?」について小さな講演のようなものをいたしました。

そのレジメを元に出版業界新聞「新文化」10/24号に記事を書きました。

今回はレジメ原稿をアップしておきます。

以下の通り

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  パルナ書房はなぜ閉店に至ったのか?

★パルナ書房の沿革
終戦直後に祖父が長屋6畳一間で創業
86年二代目が現在のJR丹波口駅前に2店舗目の20坪の書店として出店
壬生島原という新選組由来の街で角屋、輪違屋といった遊廓の跡があり近隣には中央市場もある〜下町の風情
駅を挟んだ反対側には「リサーチパーク」というIT企業群がある。
96年に三代目店長に就任。

★パルナ書房繁栄と閉店までの至を日本戦後経済史と重ねてみる。(一部省略)
ポイントは
  人口の波
  日本の政治状況の変化
  インターネットの影響

の3つに大別される。
 
1.人口の波
日本の不況の本当の理由は生産年齢人口(現役世代)減少の波による需要の減少である。
現役世代は子供を育て、車や家を購入し、お金をドンドン使わなければならないため内需が拡大するのに対し
退職世代は既に子育ても終わり家も購入しお金を使わないので内需が縮小する。
その結果ますます不景気になり本も売れなくなる。
実際に96年の生産年齢人口のピークと全国書店売上のピークは見事に一致している。
97年以降、現役世代は減少の一途をたどり書店の売上減少も止まらない。
※参照 藻谷浩介「デフレの正体」
2.規制緩和
2000年規制緩和により大店舗法が廃止され大型書店チェーン進出の条件が完全に整う

新自由主義、グローバリゼーション、市場原理、規制緩和、大店舗法廃止による大型店出店によって個人商店(パルナ書房)が閉店に追い込まれた→シャッター商店街」 
※実際には80年代半ばから商店街のシャッター化は始まっていた、その大きな理由の一つに消費者の成熟がある(訪問販売が徐々に難しくなる=教材セールス等)。日本は先進国になり消費者は80年代を通して急速に成熟した。もはやモノがないから買うからより良い物、多様な趣向を求めるが、町の個人商店にはそのニーズを満たすだけの店舗サイズというハード面も専門知識というソフト面の両方に問題があった。
本を置けば売れる時代は終わった。
※参照「ポスト消費社会のゆくえ」上野千鶴子辻井喬(文春新書)
※参照 新雅史 「商店街はなぜ滅びるのか」

3.インターネット
町の本屋の閉店の裏側にはもともと町の本屋は売上の50%以上が雑誌であり、インターネットが普及したことにより雑誌の売上が激減し、競合店とは関係なく売上が半減した。むろん書店業界全体でも同じはず。
さらにインターネットの普及で社会の在り様が変わってしまった。通勤時にツイッター、FB等のSNSをチェックする風景は昔は文庫本や新聞であった、つまり本を読む時間を奪われた。
そして森羅万象の全てをインターネットで検索ができてしまう時代になった。活字を読まなくなったのではなく、雑誌や新聞、実用書等の比重が変わった。大げさではなくグーテンベルク以来の活字文化の革命、転換期が、今、起こっている。
電子書籍の登場はこれらの変化に比べるともはや大きな問題ではない。

生産年齢人口の減少で日本全体の内需が落ち、大店舗法廃止で競合店の出店が激化し、インターネットの普及で雑誌と本の役割が激変した。そういう歴史的な社会状況の変化の中で書店経営をとらえるべきである。

★読書空間の変貌
閉店して半年、いち消費者になると本を巡る環境が大きく変わっていることに気がついた。
具体的に言えば古書店、図書館、新古書店ブックオフ等)、レンタルコミック(1冊30円)、ネットカフェ等の存在である。
消費者として利用してみると極めて魅力的なのだ、
GANTZ等の30巻を超える既刊コミックスの購入は料金だけでなく、
購入後の自宅の物理的なスペースの確保も厳しい。
どうしても新刊のみの購入となる。
さらに新刊書店では購入できないコミックス絶版問題もある。
この絶版コミックスを提供しているのは新古書店、レンタルコミック(1冊30円)、ネットカフェである。
これらの存在を認めた上でこれからの書店のあり方、新刊の扱い方を考えなければ書店は読者から取り残される。
もはや読者にとっては新刊書店は読者にとっては本を提供してる一部に過ぎない。
本を買うときは消費者、家で読むときにはじめて読者となるのである。

02年 アマゾンマーケットプレイス導入、これ以降再販価格維持商品にも"市場価格"が存在し始める。
版元、取次、書店は本を売りっ放しにしてきた、お客さんの自宅には本が溢れている。
新しく本を買うには自宅にある本を処分しなければならない。我々は売った本を自ら買取、回収するべきだったのではないか?
そうすることによってはじめて店頭の書籍価格を維持、もしくはコントロールすることが可能なのでは?
ブックオフの生み出す利益は本来我々(新刊書店)の含み利益だったのではないか?
ブックオフというモンスターを作ったのは我々(新刊書店)自身ではないか?

日本社会はフローからストックの時代に変わった。
版元、取次、書店の三者はストック(既刊本)の活用を多面的(古本も含めて)に考えなければならない。

これからの新刊書店のあり方を考える
書店は
90年代までは新刊、ベストセラーの品揃え、在庫量を競っていた。
2000年代はPOPなど文脈、編集棚等の店作り、セレクトショップなど棚の差別化
2010年代は接客力、イベント力のある店が利益を出している。
ギャラリー、ミニライブ、読書会などのイベントを通して地域を盛り上げお客さんとのつながり、囲い込みをはかっている。

地域に根ざしたパルナ書房の在り方の模索、街を巻き込んだイベントを通して街全体を盛り上げるという視点が欠けていた、出来ていなかった。
→結論、これからは書店員に要求される能力は商品知識(本読み)から接客力、イベント開催能力などに変わってくる。

2013/5/31最近、様々なイベント(一箱古本市等)を盛んに行っている書店が増えてきた。
その目的は上記の理由による読者人口減少の対策としてどうにかして人を集めてようということである。
またパルナ書房閉店後、書店仲間から近くに出店してくれとの依頼を受けた、
その理由も自店の周辺に読書散歩ができる空間を作って読書人口を集めなければやっていけないからである。
それは古書でも新刊書店でもいいのである。
もはやかつてのような集客力を書店はもっていない。
これからの書店のキーワードは競合ではなく共生である。