パルナ書房

京の表は壬生、裏に回れば島原の町の本屋~2013年4月でパルナ書房は閉店いたしました。

藻谷浩介さん、経済成長がなければ僕たちは幸せになれないのでしょうか?〜 藻谷浩介&山崎亮 学芸出版社   〜店長

お金は幸せに生きていくために必要な手段だったはずなのに
気がつけば一流企業に入って出世をすることが目的になってしまった。
なんてことはありませんか?

例えば、
都会に住んでいる人の憧れ、目標の一つに広い家と自然のある緑豊かな地域に住みたいことだとします。
でも田舎で暮らせば所得は低いかもしれないけど、そのかわり家賃が安いから暮らしていける。
田舎だから緑が豊かで食べ物も美味しいし、渋滞でイライラすることもない。
近所付き合いはちょっと面倒臭いけど、そのかわり孤独死なんてことはない(笑)
ほな、それでええやん・・・

90年のバブル崩壊から 20年〜
世界とグローバル化した日本。
際限のない競争原理が働き、価格競争、必要以上の品質向上が求められる社会とな
ってしまいました。
かつての日本企業は社員を育て大事にすることがいい会社であると賞賛されていましたが、
終身雇用制度は崩壊しアルバイト等の非正規雇用者で会社を回して利益を上げる手法がもてはやされる時代となりました。

これは書店業界においても同じです。
200 坪の大型店に正社員は 店長の 1 人だけ。
後は 20 人のアルバイトでお店を回していく。
その店長の所得水準も驚くほど低い。
一流大学を出た 30 代店長の給料が 20 万円以下という話も珍しくありません。
こんな状況では優秀な人材など育ちません。
例えば、結婚して子供を育てるということができません。
優秀な人材ほど結婚を機に退職し、他業種に移っていきます。
再生産ができず、ただ消耗していくだけなのです。
いかに少ない人件費で店舗運営をできるかが
優れた書店経営の指標となってしまいました。

20年前はパルナ書房のような 20 坪の町の本屋でも正社員がいたのですが・・・

そんな過当競争の果てに希望はあるのか?
本当にそういう生き方、働き方しか無いのだろうか?
競争社会から降りた生き方はできないのでしょうか?

本書は8月に書きました「格差社会4コマ漫画」〜孤独死へのロードマップ
http://d.hatena.ne.jp/bkpalna/20120806/1344240927
に対する一つの答えを提案してくれる一冊です。

藻谷浩介氏と山崎亮氏の二人の公開対談をまとめたものです。
藻谷浩介氏の「デフレの正体」はベストセラーとなりました。
山崎亮氏は人と人がつながるしくみ、まちおこしの実践者です。
「コミュニティデザイン」という本にその活き活きとした活動が紹介されています。
過疎化が進み寂れていく一方の地方、でも実際に現場に行ってみると案外幸せに暮らしているとか・・・
「コミュニティデザイン」に出てくる地方はなんだかとても楽しい感じなのです。
山崎氏の活動は大きなお金を産むわけではありませんがまちの人たちはつながりができて幸せなっていきます。

私もここ 1年ほど京都ランニングマップを企画、発売していく過程でいろんな人とつながりました。
ランニングを始めてランニングイベントや練習会に参加すると毎回のように新しい友達ができます。
職業や年齢の違う人達との仕事とは関係ない出会いです。
みんなで走って、走り終わったら飲んだり食べたりと〜楽しいです。
それ自体は利益を生むわけではありませんが、仲間という財産ができます。
将来、孤独死してもすぐに気が付いてもらえるかもしれません(笑)
(ま、実際には現在のランニングブームの裏にはアパレルメーカーなどのランニン
グ関連市場が大きな経済利益を生み出すようになったことで支えられている側面もあります。
私がランニングイベントに参加するのも京都ランニングマップが売れてくれないかな〜
といった下心が少しばかりあったりするのですが・・・)

この人と人がつながる楽しさとかそこから得られる安心感、
幸せの実感といった人生の豊かさみたいなものも
広い意味で財産なのではないのですか?

と山崎亮氏は遠慮がちに訴えているのです。

そんな山崎氏の「コミュニティデザイン」の活動には経済の側面からどんな意味があるのかを
藻谷浩介氏が「コミュニティデザイン」を読みながら鋭く語り始めます。

特に2章の経済成長率と実態が合ってないのはなぜ?
あたりから藻谷浩介さんの本領発揮です。
2001年から 2006年までの戦後最長の好景気と言われながら好景気の実感がなかったのはなぜなのか?
経済成長率はフローを測っているのであって、過去のストックの蓄積のデータが反映されない

3章のいつまでも経済成長し続けなければならないのか?では
例えば財政が豊かであるかどうかと、実際に豊かであるかどうかは別
なぜなら製造業からは利金を取りやすいが、農業や漁業からはとりにくい。
まして海に転がっているウニから税金は発生しない(笑)

など実にリアルで説得力のある指摘です。

「デフレの正体」に続いて日本の姿の実態がどんどん紹介されていきます。

重要なのはハードとしてのストックがあって、
ある程度の暮らしが担保された状態になってはじめてソフトの面から解決したいと考えたのがコミュニティデザインという言葉です。

経済成長そのものを否定しているわけではないのです。
80年代までの高度経済成長で十分なストックがある日本は
経済成長をせずともトントンであればストックは維持できるかもしれない。
実際に日本はここ 20年経済成長をしていないが他国と比べても恵まれています。

先ほどのランニングイベントの話しに戻りますが
ランニングブームが起きているのは欧米や日本。
中国や韓国でランニングブームが起きているといった話は聞きません。
このあたり、ストックが関係しているのではと考えます。
韓国などもうそろそろランニングブームが起きてもよさそうな感じです。

本書には日本の希望とこれからについても触れています。
よく中国や韓国の台頭で日本は没落しつつあるといった話がありますが実際には
中国や韓国に対しては圧倒的に黒字です。
逆に高級ブランドやワインなどの高級食品を売っているフランスやイタリアは日本から貿易黒字を保っています。
豊かなライフスタイルを持って、地産地消の品物を作っている国に日本はお金を貢いでいるわけです。
そこにこれからの日本のヒントがあります。
それは地産地消の農業産品や伝統工芸品、つまり地域ブランドを確立させることです。

テレビやスマートフォンは韓国に任せて、日本は地域ブランドを海外にバンバン売っていきましょう。

人口が減少していくこれからの日本、そんな時代の処方箋となる一冊です。
本書を読むともうちょっと頑張ってみるかという希望や勇気のようなものが湧いてきます。

本書を刊行した学芸出版社には
http://www.gakugei-pub.jp/
"まちづくり""コミュニティデザイン"
に関する本がたくさんあります。
本書の発行のキッカケとなったプレ対談が掲載されています、
コミュニティデザインの現場の実態がリアルに語られていています。
私の住む町の町内会でも似たような風景がありました・・・
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/038yama-mota/index.htm
本書のCMビデオもあります。
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1309-2.htm
チェックしてみて下さい。

参考図書
「デフレの正体」藻谷浩介 発行角川書店
「コミュニティデザイン」山崎亮 発行学芸出版社
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1286-6.htm
「コミュニティデザインの時代」山崎亮 中央公論新社