パルナ書房

京の表は壬生、裏に回れば島原の町の本屋~2013年4月でパルナ書房は閉店いたしました。

二宮金次郎〜低成長時代の処方箋

7月に入り書店業界は夏の文庫フェア一色です。
パルナも七夕をイメージした飾り付けをと笹を買いに出かけたのですが
どこにも売ってないのです。4件ぐらいお店を回ったのですが・・・
七夕の笹はどこに売っているのでしょう?

さて久しぶりに書籍の紹介を
二宮金次郎」といえば”勤勉”ですね。
そのイメージを覆してくれる一冊が
現東京副都知事の猪瀬直樹氏の
二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?」
です。

低成長時代と少子高齢化
最近の日本を象徴するキーワードです。

戦後からバブル崩壊までの高度経済成長時代には表面化しなかった厄介な問題ですが
実はかつて日本にも同じような時代がありました。
江戸時代、文化化政期です。
関ヶ原から元禄までの100年で人口は1600万から3000万、石高は3倍?
いわゆる高度成長期ですね。
しかしそこで成長は止まります。
その後は170年の長い低成長時代が続きます。
北関東のある村では人口が3分の1に減少し、石高もドンドン落ちてゆく・・・
その低成長時代に生まれたのが二宮金次郎、1787年のことです。

最初にふれたように二宮金次郎といえば倹約と勤勉を重ねて・・・のようなイメージがありますが
かれは薪という農作業より利幅のいい仕事をみつけ
その余禄を他者に低利で貸し付け
その利益をまた低利で貸付・・・
いわゆる複利の発想で利益を膨らまし
先の荒廃した村を立て直すことに成功します。

バブル崩壊以後
金融破綻
アメリカからの市場原理主義
カルロスゴーンを代表としたリストラ、終身雇用制の終焉
公共事業の縮小

中国からは低価格
ユニクロマクドナルド等の低価格
デフレスパイラル

いろんなグローバリゼーションの波をうけ、
これらの結果大企業の経営状況は安定してきたかに見えますが
ワーキングプアといったかつての日本では考えられなかった問題が浮上してきました。
アメリカや中国の内情をみても
日本以上の貧困、格差の現実があり、
そこに低成長時代の処方箋はなさそうです。

本書は二宮金次郎の行動を通して
江戸時代の農業を現代の工業とみなし
百姓もただ田を耕す人ではなく、穀物相場、交渉に長けた商人的気質を持った人々でもあると指摘
逆に現代の公共事業に依存する建設業をかつての農業ととらえ
どのようして業種転換をはかるべきか、一つの提案をしています。

低成長時代と少子高齢化の現実を真正面から受け止め
従来のどうやって人口を増やすのか、GDPを拡大するかではなく
国全体のGDPが減っても一人当たりのGDPが増えればそれでいいじゃないかという
非常に示唆のとんだ一冊です。

二宮金次郎が亡くなったのは1856年
既に黒船が来航し12年後には明治維新です。
二宮金次郎の目に明治の近代化はどのように映ったのでしょう。

二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?

著者名:猪瀬直樹(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.08
ISBN :9784167431143